研究概要 |
研究対象の活火山として,今年度は岩手火山,北海道駒ケ岳および樽前火山について時間軸にそった系統的サンプリングを行い,記載岩石学的特徴および主成分化学組成を求めた。また一部のサンプルについてはモード組成分析,鉱物化学組成分析を行った。その結果,1)岩手火山において過去3000年間においてマグマ混合の産物が噴出し続けているが,山頂噴火と山腹噴火(焼け走り溶岩流)では混合端成分マグマが別であることを示せた。2)北海道駒ケ岳においては特に西暦1694年噴火を詳細に検討し,短時間の休止期を挟む2つの噴火フェーズに分けられること,噴火には3タイプのマグマが関与したことが明かになった。そして噴火前にはこれら3種のマグマが独立したマグマ溜まりを作っていたことが判明した。これは複数のタイプのマグマが成層マグマ溜まりを形成するという,従来の活火山のマグマ系モデルの見直しとなる成果である。3)樽前火山については1667年と1739年の大噴火を検討した。その結果,両者とも白色軽石の他にスコリアや縞状軽石を産しマグマ混合が示唆されるが,混合端成分のうち玄武岩質マグマが2つの噴火では別であることが明かになった。 また今年度は次年度以降の研究のための希土類元素分析手法の改良および同位体比分析ルーチンの構築を行った。その他に活火山のマグマ系としてニュージーランドのルアペフ火山,複成火山と単成火山という対照的な火山のマグマ系などについて研究成果のとりまとめを行った。
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