研究概要 |
研究対象の活火山として,今年度は北海道駒ケ岳および樽前火山の考察を進め、今年度に噴火が開始された有珠火山・三宅島火山についても、急遽あらたに検討を行った。その結果,次のようなことが明らかになった。1)有珠火山では西暦1663年から噴火年代とともに、次第に全岩SiO_2%が減少しており、2000年噴出物は歴史時代でもっともSiO_2に乏しいデイサイトであることが明らかになった。2)三宅島火山では我々の研究によって、1983年の噴火まで浅所の安山岩質マグマと深所の玄武岩質マグマという、2つのマグマ貯蔵系が活動していたことが明らかになっていたが、2000年噴火ではこれらのうち浅所の安山岩質マグマが海底から、そして玄武岩質マグマが山頂からというように、それぞれ別個に噴火したことが明らかになった。その結果、500年あまり存続したマグマ系は破壊・更新され、現在まで続く活動は新しい玄武岩質マグマの活動によることが示唆された。3)北海道駒ケ岳火山では西暦1640年噴火から1929年までの4回のマグマ噴火について詳細に検討し,いずれもマグマ混合の証拠が認められるものの、噴出物の不均質の程度や化学組成の多様性が時間とともに変化しており、これらは1640年に形成された層状マグマ溜りの時間変化で説明できる可能性が示された。4)樽前火山については前年度の検討に加え、19-20世紀の噴出物も検討し、マグマ混合端成分組成および混合比の時間変化を見積もった。その結果、本火山では1667年と1739年の大噴火によって低温側端成分マグマはほぼ消費され、19世紀以降は高温端成分マグマを主体として小規模に噴火していたことが判明した。このことから、樽前火山では17-18世紀クラスの大噴火が起こる可能性は低く、逆にマグマ噴火の休止期に入った可能性も指摘できる。
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