研究概要 |
研究対象の活火山として,北海道駒ケ岳および樽前火山の考察を進め、研究期間中に噴火が開始された有珠火山・三宅島火山についても検討を行った。さらに1995年のルアペフ火山の噴火、および国後島の爺爺岳火山についても研究成果をまとめた。その結果,次のようなことが明らかになった。1)有珠火山では西暦1663年噴火と1769年以降の噴火をもたらしたマグマ供給系は別であることが明らかになった。これは従来のモデルの全面的な改訂を必要とする重大な結果である。2)三宅島火山では1983年の噴火まで、浅所の安山岩質マグマと深所の玄武岩質マグマという、2つのマグマ貯蔵系が活動していたことが明らかになっていたが、2000年噴火ではこれらのうち浅所の安山岩質マグマが海底から、そして玄武岩質マグマが山頂からというように、それぞれ別個に噴火したことが明らかになった。その結果、500年あまり存続したマグマ系は破壊・更新されたことが明らかになった。3)ルアペフ火山の1995年の噴火では、浅所の結晶に富んだマッシュ状マグマ溜まりに高温マグマが貫入を続けていたことが明らかになった。さらに頻発した噴火は、それぞれ別のマグマバッチの噴火であったことを示した。4)爺爺岳火山では、これまで不確定であった噴火史について広域テフラを用いて解明を試みた。その結果、最近1000年間の高い活動度が明らかとなり、マグマ系解明のための基礎的データが得られた。5)北海道駒ケ岳火山や樽前火山では17世紀噴火から現在までのマグマ系の変遷が初めて明らかにされ、それぞれ最初の噴火で成層マグマ溜まりが形成されていたことを示した。特に駒ケ岳については2000年の水蒸気噴火から見た火山活動度について考察した。
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