研究概要 |
1.試料の採集 本研究の遂行のために必要な火山岩試料のうち,富士,箱根,愛鷹,伊豆大島,利島,新島,式根島,神津島,三宅島,御厳島の10地域のものについては既に採集済みである(合計110試料)。本年度は上記のものに加えて湯河原,多賀,宇佐美,八丈島,青ケ島の5地域から40試料の火山岩を新たに採集した。試料はそれぞれの火山の代表的な層準からできるだけ未分化で新鮮なものを採集するよう留意した。 2.主成分元素,微量元素の分析 上記の火山岩試料の薄片の顕微鏡観察に基づき,各地域からそれぞれ3個程度の試料を選び(合計53試料),主成分元素,微量元素の分析を開始した。主成分元素は蛍光X線分析計,微量元素(Rb,Ba,B,Nb,Pb,Sr,Be,Zr,Li,Y,Cr)はICP発光分析計,グラファイト炉原子吸光分析計を用いて分析を行っている。 3.予察的な結果 これまでのところ,伊豆弧火山岩のB/Nb,Pb/Nb,Ba/Nbに明瞭な島弧横断方向の変化が見いだされており,それらはいずれも海溝側ほど高く,背弧側に向かって連続的に減少する傾向を示す。一方,Rb/Nb,K/Nbには島弧横断方向の変化がほとんど認められない。B/Nb,K/Nbに関する傾向は千島弧で見られるものと極めて類似しており,海洋性島弧に普遍的に認められる傾向である可能性がある。
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