研究概要 |
1)Schreinemakers'の束の原理に従ったpetrogenetic grid作製プログラムの改良 変成岩の鉱物共生関係を理解するために、Schreinemakers'の束の原理に従った作図プログラムを改良した。既存のプログラムは(C+4)相系以上の解析では、作画が手作業になるという欠点を抱えていた。本研究では、帰納的解法を導入し、DOS-V機上で使用が可能な、(C+4)相系以上の自動作画可能なソフトの開発に成功し、公開した(吉田・平島、1999)。 2)マクロな岩石組織の解析方法の改良 肉眼サイズ(x1倍)と顕微鏡サイズ(x100倍)の中間岩石組織の観察方法を向上させるために、デジタルスキャナーを導入した。この装置は粗粒な岩石の組織解析に大きな威力を発揮した。 3)Schreinemakers'の束の原理に捉ったpetrogenetic grid作製ソフトウエアーと熱力学的ソフトウエアーを併用した岩石組織解析による変成岩の形成史研究 あ)三波川変成帯の紅簾石石英片岩の研究では、鉱物組み合わせを解析し、タルクー白雲母共生関係の安定領域を説明する相図を提案した(Izadyar et al.,2000)。 い)中国蘇魯地域の超高圧変成岩研究では、精密な岩石組織解析から超高圧変成岩の上昇パスを特定する作業に重点を置いた。その結果、蘇魯地域の東北部で採集した多くの超高圧変成岩は、マントル深度(100km)から下部地殻(30-40km)まで、断熱的に上昇していたことが判った。これの成果の一部はNakamura & Hirajima(2000),Banno et al.(2000)として公表した。このような上昇パスが、蘇魯地域全域で支配的であるか否かを確認するために、蘇魯地域の中央部で採集した超高圧変成岩についてもその上昇パスを検討した。この作業には平成11年度にたマクロサイズの岩石組織観察装置が威力を発揮した。その結果、半島中央部で採取したザクロ石ペリドタイトから超高圧時に出来た鉱物組み合わせと地殻下部付近まで上昇した時に出来た鉱物組み合わせを読み取ることに成功した。これらの鉱物組み合わせに、温度圧力計や岩石成因論的グリッドを適用した結果、山東半島中央部の超高圧変成岩も断熱的に上昇したことが判った。その成果の一部は、2000年6月のWestern Pacific Geophysical Meeting(東京)で口頭発表し、現在Journal Petrlogy誌で査読中である。 う)イタリアの超高圧変成岩の研究では、超高圧変成岩が沈み込んでゆくパスを岩石成因論的グリッドを用いて、より精密に制限することが出来た。この成果はCompagnoni & HirajimaとしてLithos誌に印刷中である。
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