研究概要 |
今年度は、研究の最終年度にあたり、トルコ共和国の黒海沿岸地域のMedetli地域の元素、Sr同位体組成のプロファイリングの作成を中心に行ってきた。平成11年度、12年度の分析結果と総合させ、層序に従った元素濃度と同位体の組成変化を解析した。その結果、白亜紀-第三紀境界層と予想されるB層中の薄いgoethite-rich layerにFeを始め各種金属元素の濃集が認められた。それと同時にAs,Sb,Znなどの元素の濃集も見られ、プロファイリングでは上下の層に比べ高い値を示した。このようなgeothite-rich layerの存在は、世界各地域のK-T境界層で観察されることと一致し、また高い金属元素とAs,Sb,Znの濃集も類似した結果を与えた。また、K-T境界層の特徴の一つでもあるIrについても測定を試みたが、ところが予想されたgoethite-rich layeでは高い濃度の値が得られず、0.07-0.08ppbという比較的低い値が得られた。この結果は、goethite-rich layeがK-T境界層ではない可能性と、それとは別に地層堆積後の続成作用などの間にIrが希釈されてしまった可能性も示している。Sr同位体比の測定は下部のA層で0.710と高く、B層で急激に0.708前後の値に変化していることがわかった。goethite-rich layeでも同様な0.7078-0.7080の値が得られ、この値は当時の海水の値、0.7078に非常に近い値であった。このことは、A層からB層堆積に伴い、海水からのSrの沈殿が多くなったものと推測された。この地域で得られた結果は、世界各地域のK-T境界層との類似点と相違点の両方を示している。また、IrなどのK-T境界を示す強力な証拠が得られなかったが、その理由等も含め今後の課題として残されている。 また、関連研究として隠岐島後の角閃岩やモンゴルの古生代後期花崗岩類の岩石化学的研究も同時に実施してきた。これらの研究は、古生代後期-中生代初期における火成活動の時代変化という観点で研究を実施してきた。研究成果は、論文として公表している。
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