研究概要 |
本研究では、隕石中の希ガス同位体組成をレーザー・プローブ脱ガス法を用いて測定することにより、ハロゲン含有量が高い隕石やAllende隕石のコンドルールやCAI中のハロゲン元素の分布を調べる。この特色は、分析困難な微量ハロゲンの隕石中における分布を、宇宙空間における天然の中性子照射による核反応^<35>Cl(n,β)^<36>Ar,^<79>Br(n,β)^<80>Kr,^<127>I(n,β)^<128>Xeなどと、レーザー・プローブによる超高感度希ガス局所分析を適用することにより解明することであり、世界的にも最初の試みである。 二年計画の二年度は、以下のような研究を行った。1)Allendeの薄片(厚さ約300ミクロン)を切り出して表面研磨した後、光学顕微鏡と国立極地研究所(NIPR)の走査型電子顕微鏡を用いて鉱物組成を詳細に調べた。この結果をもとに、NIPRのEPMAを用いて白色包有物(CAI)を重点的に調べて塩素・カリウムのマッピングをおこなった。塩素、カリウムはCAIの周辺に濃集しており、外部からの変成に伴ってこれら元素が難揮発性元素からなるCAIに侵入したことを示す。2)Nd-YAGパルスレーザー(プローブ径:約50ミクロン)を用いて、塩素濃度の高い領域と検出限界以下の領域の希ガス同位体組成を系統的に測定した。3)この結果、CAIを囲むマトリックスやCAIの低塩素領域に比べて、CAI中の塩素・カリウム濃集領域において、明瞭に^<129>Xe含有量と同位体比^<80>Kr/^<84>Kr,^<129>Xe/^<132>Xeがともに高いことが分かった。この結果は、CAIが母天体に捕獲される以前に、原始太陽系星雲中で変成を受けてハロゲンを獲得したことを強く示唆している。 この結果は、本研究で初めて明らかにされたものであり、惑星形成過程の解明に重要な制約条件を与えるものであり、本年5月にアメリカで開催されるGoldschmidt Conferenceで発表する。
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