研究概要 |
我々はこれまでに、Yamato-74191隕石やAllende(CV3)隕石中のCAI(Ca-Al-rich inclusion)に極めて高濃度のハロゲン(Cl, Br, I)を希ガス分析に基づいて予見していた。原始太陽系星雲中で固体粒子が凝縮するときにハロゲンは揮発性元素として振る舞うと一般に考えられおり、CAI中に観測されるこの高濃度のハロゲンを生成するメカニズムを説明することは難しい。これは、ハロゲンの宇宙化学的振る舞いに付いて我々の知識が欠落していることも要因である。本研究では、.主としてAllende隕石中のCAIからマトリックスにかけて、レーザーを使った希ガス抽出法を併用して空間分解能150ミクロン程度で希ガス同位体分布を測定した。測定された^<129>Xe濃度の分布は、EPMAにより測定された塩素濃度分布と良い相関を示した。^<80>Kr/^<84>Krと^<128>Xe/^<132>Xe比も^<129>Xe/^<132>Xe比が高い測定点で高い値を示している。^<80>Krと^<128>Xeは宇宙空間で^<79>Brと^<127>Iによる中性子捕獲反応で生成されたものである。 本研究で得られた結果は、CAI中のハロゲンが水質変成でソーダライトが形成される過程に伴って外部から入ってきたものであることを示している。また、このようなハロゲン由来の希ガス同位体がCAIと接触しているマトリックス物質中に全く検出されないことから、CAI中の高濃度ハロゲン含有物質は太陽系星雲中で形成されたものであり、CAIがマトリックス物質に埋め込まれて母天体を作った後の産物で無いことが明らかになってきた。更に、高濃度の^<129>Xeがソーダライトに含まれていることは、水質変成は消滅核種^<129>Iがまだ多量に生き残っているような太陽系形成の極めて初期に起こったことを示している。
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