研究課題/領域番号 |
11640489
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
中村 昇 神戸大学, 理学部, 教授 (90030791)
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研究分担者 |
山下 勝行 神戸大学, 理学部, 助手 (50322201)
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キーワード | 塩素同位体 / 表面電離型質量分析計 / 標準海水 / 標準岩石 / Allende炭素質隕石 / Allegan普通隕石 |
研究概要 |
宇宙地球化学における軽元素同位体の役割は重要であり、従来より惑星物質の起源と進化の研究に幅広く応用されてきた。ところが塩素については精密同位体分析法が充分確立されておらず、固体惑星物質の塩素同位体組成はあまりよく分かっていない。とりわけ隕石については、ほとんど研究例がない。そこで本研究では表面電離型質量分析計による精密同位体分析法の確立と微少量の宇宙地球物質への応用のための基礎的検討を遂行した。昨年まで確立した有機塩素系溶剤(環境汚染物質)の塩素同位体分析法の確立に引き続き、本年度も標準海水・研究室標準試薬の分析を繰り返すと共に、標準岩石及び隕石の塩素同位体の分析法を詳細に検討した。 岩石から塩素を抽出する法として、以前よりアルカリ溶融法とフッ酸リーチング法を検討してきたが、前者は、塩素の高回収率の場合でも質量分析に問題を生ずることがしばしばあることが分かり、本年度からはフッ酸リーチング法に絞って検討した。その結果、フッ酸リーチング法で標準岩石(JR-1)やAllende炭素質隕石を用いて実験を繰り返し、ほとんどの場合85〜90%の収率が得られ、かつ安定した質量分析が可能になった。 東大海洋研の白鳳丸(KH-98-1航海)で採取された太平洋の海水(P-A)の結果(^<37>C1/^<35>C1=0.319790±60)を基準(δ^<37>C1_<SMOC>=0.00‰)にして、標準試薬(CsC1):δ^<37>C1_<SMOC>=-2.56±0.21(‰);標準岩石(JR-1):δ^<37>C1_<SMOC>=-0.74±0.24(‰);Allende:δ^<37>C1_<SMOC>=-2.87±0.32(‰);Allegan:δ^<37>C1_<SMOC>=+0.47±0.52(‰)が得られた。この結果は、海水、標準試薬、標準(地球の)岩石及び隕石相互に充分に有意の差があることを示しており、現在の精度でも様々な隕石への応用が可能であることを証明している。従って、今後の隕石研究への展開が極めて有望となった。この結果については、平成13年11月の質量分析学会(同位体比部会)で発表した。また、昨年度までに得られた有機塩素系溶剤(環境汚染物質)に関する塩素同板分析結果については、2つの論文にまとめ、国際誌に投稿した(一つは受理、他の一つは審査中)。その他、関連する隕石物質に関する化学・鉱物・同位体の結果をまとめ、国際および国内の専門誌に発表したり、印刷の段階にある。
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