研究概要 |
本研究は、中国西部砂漠地帯の塩湖堆積物の柱状試料に含まれる植物プランクトン化石である円石藻に含まれる長鎖アルケノンの不飽和度指標から古湖水温を推定することを目的とした。このため、中国西部のジュンガル盆地の最西部の塩湖アイビー湖(Lake Aibi)から採取された湖底堆積柱状試料を分析した。その結果、以下のことが分かった。1)湖底堆積柱状試料の一部をとり、有機溶媒抽出により脂質成分を抽出し、シリカゲルカラムクロマトグラフにより炭化水素成分を分離した。これをガスクロマトグラフ分析にふした結果、炭素数37,38,39の長鎖炭化水素に相当する化合物が多量に存在することを見出した。 2)炭素数37の長鎖炭化水素をガスクロマトー質量分析計で分析した結果、分子イオン、フラグメントイオンの質量数(m/e)から、これらの物質が炭素数37の長鎖不飽和アルケノン(3種類)であることを確認した。 3)これらの化合物の不飽和度をSawada-Handa式で解析した結果、この円石藻化石の生育水温は4.8℃であることを確認した。 4)これらの堆積物試料には円石藻が多量に存在した。光学顕微鏡、走査型電子顕微鏡による検鏡結果ではGephyrocapsa sp.の存在が確認され、長鎖不飽和アルケノンの起源藻類であると判断された。 以上の結果は、海洋堆積物と同様、塩湖堆積物試料により塩湖が経てきた古水温変動の復元の道を拓いたもので、今後の成果が期待される。
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