研究概要 |
本研究では,更新世に激変した地球規模の気候変動は海洋環境を大きく変動させたと考えられる.それらの変動の内,特に生物生産量の変動を調べる事を目的とした.本年度では,特にオホーツク海を対象として,その海底から採取した堆積物コアを試料とした. 1.オホーツク海CM6PCコアの調製 CM6PCコア(KH-98-3航海)は全長約12.8mで,それを2.5cm毎に切断し分析用試料とした.全分析用試料のほぼ半数を真空凍結乾燥法によって乾燥させた後,粉末化し,分析用試料を調製した. 生物起源物質の化学分析 炭酸カルシウムを測定した結果,オホーツク海盆の水深3000mから採取された本コア中には含有されていないことがわかった. 生物起源オパールの含有量は,表層0-4m層では150-200mg/gの範囲で変動しているが,それ以深では漸次減少し,8-10m層では10mg/g以下となり,10m層以深では再び増加傾向を示した.本コアの年代は未だ不明であるが,少なくとも過去に比べて現在の方が濃度が高いことがわかった.また,このオパールの鉛直分布は一般的知られている酸素同位体カーブと類似した変動を示していることから,8-10m層は氷期最寒期に相当する年代を示すものと推定される.すなわち,氷期のオホーツク海は海洋表層でオパールを形成するような動植物プランクトンの生産が制限されていたと推定される.
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