平成12年度においては、惑星表層部において、岩石が水と相互作用する際の反応について、化学種測定(chemical speciation)の観点から質量分析計における測定手法についての改良を行い、研究を行った。特に、共存するアルカリ、アルカリ土類元素とシリカ系との関係について、Caのシリカ錯体がNaより低濃度より確認できることや、天然の系において最も基本となる塩化ナトリウム水溶液系中のシリカ溶存種について、報告を行った。 一方、月の試料、特に海の岩石の一つAsuka-881757の希土類元素存在度パターンを精密測定した結果、まず、月の海の試料については、Ce異常が観測されないことが確認できた。また、そのパターンは軽希土側で比較的単調な左下がり、重希土側で水平に近いことがわかった。これは、月初期において、かねて予測されていた、単純な全岩分配パターンに沿う火成活動が、月の初期の活動に存在した可能性を示すものである。 又、加速器を用いた極微量元素、核種の検出について、人工合成試料に関して予備実験を行った。現在は、加速部分の改修を待ちつつ、ECRISイオン源を用いた測定に関する感度、精度の評価、実試料への応用のためのデータ取得に努めつつある。
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