平成13年度においては、以下の3点について研究を行った。 1.惑星表層部において、岩石が水と相互作用する際の反応について、特にアルカリ元素とアルカリ土類元素の影響に主眼を起き、化学種測定(chemical speciation)の観点から、研究を行った。その結果、アルカリ土類金属が主に影響する環境下では、シリケイトはより、水に溶存しやすく、かつ、環状の溶存種となっていることが判明した。このことは、アルカリ土類に富む月の高地において、水と表層物質の相互反応の痕跡について検証を進める際、一つの因子として考慮すべきことである。 2.月の試料、特に海の岩石の一つAsuka-881757の希土類元素存在度パターンを精密測定した結果、まず、月の海の試料については、Ce異常が観測されないことが確認できた。また、そのパターンは軽希土側で比較的単調な左下がり、重希土側で水平に近いことがわかった。これは、月初期において、かねて予測されていた、単純な全岩分配パターンに沿う火成活動が、月の初期の活動に存在した可能性を示すものである。 3.加速器を用いた極微量元素、核種の検出について、人工合成試料(石英、およびアルミナ)に関して予備実験を行った。その結果、特に化学的前処理をしない固体試料を直接イオン源に導入することにより、10^<-13>レベルの存在度の元素の検出、定量が可能であることが判明した。また、宇宙線生成核種の一つである^<26>Mgの測定に関しては、高加速(6MeV/u)とfull strippingの応用により高分解能、高感度の検出が可能であることが判明した。
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