研究概要 |
本年度は、N,N-dimethy1-aminonaphthalene(DMAN)の4-位に異なる置換基を導入した化合物を用いて,S^1ーS^2状態間の振電相互作用が無幅射遷移(内部変換)速度に及ぼす影響について検討した。実験として,時間相関単一光子計数法に基づくピコ秒けい光寿命測定を中心に行った。その結果,内部変革速度は,置換基の導入によって著しく変化することが判明した。すなわち,メトキシ基,メチル基のような電子供与性置換基は内部変換速度を減少させ,シアノ基のような電子吸引性置換基を導入すると,DMANに比べてさらに内部変換速度が増加することが分かった。吸収スペクトル,MCDスペクトルの測定結果に基づいて、その原因を考察したところ,DMANの4-位に電子吸引性置換基が置換するとS_1ーS_2状態間のエネルギー差がさらに減少し,逆にDMANの4-位に電子供与性置換基が置換するとS_1ーS_2状態間のエネルギー差が増加することが分かった。すなわち,S_1-S_2状態間の振電相互作用によるFranck-Condon因子の増加が,DMANの以上に速い内部変換を引き起こしていることが明らかにされた。また,けい光寿命の温度効果実験から,内部変換過程の活性化エネルギーを各化合物について決定することができた。その結果も上記の結果と同様に電子吸引性置換基が置換すると活性化エネルギーが減少し、逆に電子供与性置換基が置換すると活性化エネルギーが増加する傾向を示した。さらに,極性溶媒中で内部変換速度が著しく減少する理由について明らかにすることができた。
|