研究課題/領域番号 |
11640506
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
藤村 陽 京都大学, 大学院・理学研究科, 助手 (00222266)
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研究分担者 |
梶本 興亜 京都大学, 大学院・理学研究科, 教授 (30029483)
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キーワード | 酸素原子 / 亜酸化窒素分子 / 水分子 / 反応動力学 / ドップラー分光 / 微分散乱断面積 / 回転角運動量 |
研究概要 |
気相素反応のダイナミックスを明らかにする上で生成分子の振動回転状態分布と散乱角度分布は最も基本的な情報である。これまでは実験的な困難から、主にどちらか一方の分布測定によって反応のダイナミックスが議論されてきたが、そのような不完全な状態選別実験に基づいた議論は大いに誤っている可能性が、近年の理論計算などから予測されている。こうした観点から、高分解能偏光ドップラー分光法を用いて、O(^1D)原子と幾つかの分子の反応について生成分子の状態選別をした散乱角度分布を測定してきた。本研究ではさらに反応生成分子の回転角運動量の偏向についても解析を行った。この情報は散乱角度分布や振動回転分布よりも反応領域で何が起きているかを直接反応しており、散乱角度分布や振動回転分布の情報と組み合わせることで、より確かに素反応の動力学の知見を得ることができた。 N_2Oと反応分子をフローさせ、193nm光によるN_2Oの光分解でO(^1D)を生成した。反応の生成分子は適当な遅延時間ののち高分解能波長可変色素レーザー光で検出した。そのドップラースペクトルの線形の解析から、O(^1D)+N_2Oでは、生成するNO分子が広い振動回転準位に分布し回転角運動量は分子座標系に対しても等方的で、安定な反応中間体が存在しない系であるにもかかわらず、エネルギー分配が中間状態の自由度の間で効率良く起きていることが明らかになった。この結果は、HOOH型の安定な中間体を経由するO(^1D)+H_2Oとは逆の傾向であり、中間体の安定度と反応の動力学の関係について従来の単純な描像とは異なった結果である。これは中間体の安定度だけでなく、中間体分子の運動自由度の結合や系を構成する原子の質量なども重要な因子であることを示唆している。 本補助金によって、光学素子、試料、レーザー色素など実験に必要な消耗品を不足なく購入することができた。
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