水素結合長の温度変化の特性を実験的に明らかにするために、幅広い温度範囲で水素結合中の重水素核磁気共鳴を測定するのが本研究の目的である。重水素の幅の広くかつ弱い強度の信号を測定するためには、パルス-FT法を用いて長時間信号を積算することが不可欠である。それを実現するために以下のような測定装置を作製した。 データ収集ユニット(HP34970A・日本ヒューレットパッカード)を購入し、プローブの各所の温度を同時にモニターし、データを携帯型のコンピュータ上に収集する装置を製作した。これにより温度コントロールが不安定になる兆候を事前に検知し、測定スケジュールを手動で制御できるようになった。長時間の積算をルーチン化するには自動化が必要であるが、それについては今後製作する。 大容量の液体ヘリウム容器(CMSH 50)(クライオハブ社)を購入してクライオスタット内に充分な量の液体ヘリウムを供給できるようにし、10時間程度の連続積算ができるようになった。 当研究室既設の低温用プローブを改造し、周波数を重水素核用に固定したタンク回路を作成した。しかしながら、幅広いスペクトルを取るのに必要な高出力のパルスを出力した場合の放電を回避できていないことがわかった。絶縁材の配置を工夫し改良を進めると共に、低出力のパルスで幅の広いスペクトルを測れるように周波数ステップの方法を検討中である。
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