今年度は主としてマイクロ波回路の改良により既存分光器の感度向上に成功した。購入した部品により、導入マイクロ波のパワーアップと検波系のノイズを低減することが出来た。また、マイクロ波空洞を構成する片方の凹面鏡の裏面を真空容器の外部に出すことにより、高沸点液体及び固体試料のスペクトルの観測が容易になった。これまで我々が手がけてきた一連の置換ベンゼン類の再測定による分子定数の精度向上および新規分子の帰属を行った。それらはアニソール及びフッ素置換アニソール、ベンジルアルコール、モノハロゲンベンゼンなどである。 研究目的の一つである安息香酸〜水錯体の構造をMP2/6-31G^<**>レベルで計算した。その結果、カルボキシル基面内に水の酸素と水素が入り(もう一つの水素は面外)6員環を形成する構造が他の多くの極小値を持つ構造に比べ少なくとも20kJ/mol以上安定であることを見出した。現時点では、この構造をもとにスペクトルの測定を行っている。カテコール〜水、アニソール〜水を順次とりあげる予定である。 なお、大型(525φ)凹面鏡の製作は表面粗さがミクロンオーダーに入った段階で、面および形状精度の向上を目指している。また、既存四重極型質量分析計の分光器本体へ接続はほぼ完了したが、分析計の不調により初期の目的には到達していない。
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