振動励起分子の光励起反応ダイナミックスの研究を電子励起アセチレン分子を対象として行った。 1.昨年度赤外-紫外2重共鳴分光によって見出した^1A_u3V_3'+V_6'ungerade回転振動状態の分裂について、ゼーマン量子ビート分光を試み、これらの分裂準位が磁気モーメントをもつことを実証した。一方、3V_3'+V_4'振動状態の回転準位は磁気モーメントをもたない。すなわち、面外振動は1重項-3重項相作用を阻害する。したがって、1重項-3重項相互作用は平面構造の励起アセチレンにおいてなされると結論した。 2.電子励起状態アセチレンの反応ダイナミックスを探るために、47000〜50500cm^<-1>の広い領域で、LIFスペクトルとH-atom actionスペクトルを測定した。二つのスペクトル線強度を比較することにより、次の3つの領域において、前期解離の反応確率の特徴があることがわかった。 (1)48000cm^<-1>(E_<excess><2000cm^<-1>)以下では、振動帰属が可能で、反応確率は極めて小さい。変角振動状態と他の電子状態との結合は極めて小さい。 (2)48000cm^<-1>〜49500cm^<-1>(E_<excess>〜3500cm^<-1>)の範囲では、反応確率は準位によらずほぼ一定となっている。変角振動反転障壁を超え、大振幅振動運動の寄与がある。 (3)49500cm^<-1>(E_<excess>>3500cm^<-1>)以上では反応確率は、エネルギーとともに指数関数的に増大する。したがって、状態の断熱的解離の寄与がある。なお、状態の断熱的解離には4000-5000cm^<-1>のポテンシャル障壁がある。 3.赤外-紫外2重共鳴励起によってungerade振動準位からの前期解離をはじめて観測した。 以上の研究を遂行するにあたって、購入備品の磁力計は、ゼーマン効果の測定のために使用された。
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