研究概要 |
(1)二次元赤外相関分光法によるタンパク質の水和及び変性過程の研究 β-ラクトグロブリン(βLG)の0,0.5,1.0,…5.0%水溶液を用意し、その赤外全反射吸収スペクトルを測定した。さらにそれらのスペクトルをもとに二次元相関スペクトルの計算を行った。この結果、赤外二次元相関スペクトルの解析から二つの重要な知見が得られた。i)濃度変化によってもタンパク質の二次構造はわずかながらに変化する。ii)βLGの全反射吸収プリズムへの吸着にともなう構造変化も起こるが、これによるスペクトル変化は、濃度によるスペクトル変化に比べはるかに小さい。二次元相関赤外分光法を用いてヒト血清アルブミンのpHに依存する二次元構造変化について調べた。その結果、pH5.0-4.4のN型でも、COO^-基のprotonationが起こり、いろいろな強さの水素結合をもつCOOH基が形成されることが明らかになった。pH4.6-3.8のN→F転移では、水素結合をしていないCOOH基の存在が明らかになった。このCOOH基はN→F転移の間にドメインIIIがほどけ拡大したために生じたものと考えられる。 (2)二次元近赤外相関分光法によるタンパク質の水和及び変性過程の研究 ヒト血清アルブミン(HSA)の1.0,2.0,3.0,4.0,5.0wt%水溶液を用意し、その近赤外スペクトルを測定した。さらにそれらのスペクトルをもとに二次元相関スペクトルの計算を行った。この二次元相関近赤外スペクトルの解析から次のような知見が得られた。i)HASの二次構造は60℃付近で突然変化する。ii)タンパク質の水和もやはり60℃付近で大きく変化する。おそらく水和の変化と二次構造変化は平行して起こる。i)、ii)の解析には二次元相関近赤外スペクトルのスライススペクトルの利用がきわめて有効であることがわかった。 (3)二次元近赤外-赤外相聞分光法によるタンパク質の水和及び変性過程の研究 二次元相関近赤外-赤外分光法をもちいて酸変性における卵白アルブミン水溶液のモルテングロビュール状態について研究した。近赤外スペクトルにおける水の結合音領域(7300-6700cm^<-1>)と赤外スペクトルにおけるアミドI領域(1700-1600cm^<-1>)を比較し、水和と二次元構造変化との関係を議論した。
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