研究課題/領域番号 |
11640517
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研究機関 | 高エネルギー加速器研究機構 |
研究代表者 |
近藤 健次郎 高エネルギー加速器研究機構, 共通研究施設, 教授 (20004434)
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研究分担者 |
沖 雄一 高エネルギー加速器研究機構, 放射線科学センター, 助手 (40204094)
三浦 太一 高エネルギー加速器研究機構, 放射線科学センター, 助手 (80209717)
鈴木 健訓 高エネルギー加速器研究機構, 放射線科学センター, 教授 (40162961)
沼尻 正晴 高エネルギー加速器研究機構, 放射線科学センター, 助手 (20189385)
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キーワード | 陽電子消滅 / 極低温 / 高分子の凍結 / 分子間ポテンシャル / 捕捉電子 / ポジトロニウム / 光効果 / 自由体積 |
研究概要 |
極低温におけるPs生成率の増加は、高分子構造の凍結とともに高分子間に浅くトラップされた電子が増加することによる。これらの浅く捕捉された電子の増加とともに、陽電子は電子を捕捉する確立が増加し、Ps生成が増加する。捕捉電子については、ESRなどを使い以前からその存在は知られていた。この捕捉電子の増加がPs生成を増加させる現象は、反再結合(anti-recombination)或いは反抑止作用(anti-inhibition)として一般的に知られており、このような増加現象は他の場合にも観測されている。以前は、Ps生成の増加を、高分子構造の運動が停止し、Psが入れる空隙が増えたからと、高分子構造の観点から説明していた。本研究を通して、構造より、高分子構造に浅く捕捉された、捕捉電子の増加という説明が一般的になってきた。また、捕捉電子の極低温における増加は、ESR等を通してよく知られた事象である。 極低温におけるPs生成の増加は、ガンマ線照射した材料で異なった現象を示す。ポリエチレン(PE)では、未照射の場合、24時間程度で急激な増加は一定になる。1MGy照射すると増加は緩やかになり、増加が一定になるには数100時間を要する。2MGy、3MGyと照射量を増加するに従い、Ps生成の増加は30時間、60時間と停滞し、その後緩やかな増加を示す。これは試料中に、照射に起因するラジカルが生成し、ラジカルがPs生成増加の要因になる捕捉電子を吸着してしまい、陽電子が捕捉電子を捕捉する確立を減少させるからと考えられる。
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