本研究は、ラジカル対のナノ秒オーダーの反応ダイナミクスを、ナノ秒マイクロ波パルスを用いた収量検出磁気共鳴法により、時間分解測定には適さない、時間分解能の低い検出器しかない物理量、例えば、屈折率、旋光度などの測定から行おうとするものである。これにより、高い時間分解能を持つ光学検出法が適用し難い試料や、基質の光学異性化など光学検出法では観測できない反応の研究が可能になる。 この研究では、信頼性の高い液体クロマトグラフ用検出器を使用する都合上、試料溶液の流通にはかなりの圧力を必要とする。これについては、試料溶液を耐圧ガラス管内に貯蔵し、窒素ボンベの圧力を利用して高圧で流し、共振器内のセルも漏れが起きないようなセットアップを作り、チェックを行った。その結果、反応後十秒程度で試料を検出器まで運び込め、その広がりは無視できることが分かった。 また、既存のプログラムでは不可能であった正確な時間間隔でマイクロ波パルス照射時刻や測定磁場を変える制御プログラムを開発した。また、研究予定であった、300mT領域だけでなく、600mT領域でも同様な研究を行えるよう、装置を拡張した。
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