研究概要 |
前年度、カチオン性ジテルロキサンAr_2Te(+)-O-Te(+)Ar_2(1)とテルロキシドAr_2TeOとのσ^*_<-n>軌道間相互作用に基づく反応を見出し、超原子価Te-Oアピカル結合を主鎖の繰り返し単位とするオリゴテルロキサンAr_2Te(+)-[-O-TeAr_2-]_n-O-Te(+)Ar_2の生成を見出した。オリゴテルロキサンは平衡生成物として存在し、分子集合体と考えることができる。今年度は、σ^*_<-n>軌道間相互作用に基づく1とセレノキシドAr_2SeOおよびカルボキシレートとの反応を検討した。 カチオン性ジテルロキサン1と1および2当量のAr_2SeOとの反応を行ったところ、それぞれ対応するトリカルコゲノキサンAr_2Se(+)-O-TeAr_2-O-Te(+)Ar_2(2)、および、テトラカルコゲノキサンAr_2Se(+)-O-TeAr_2-O-TeAr_2-O-Se(+)Ar_2(3)を選択的に生成することが判った。構造は^1H NMR,^<125>TeNMR,^<77>Se NMR,およびFAB-MSによって決定した。本系はSe-O-Te超原子価結合を主鎖に有するオリゴマーの初めての例である。ジテルロキサン1とテトラカルコゲノキサン3との1:1反応では選択的にトリカルコゲノキサン2のみを生成したことから、オリゴテルロキサン同様、平衡生成物として存在し分子集合体と考えることができる。オリゴテルロキサンと異なり、オリゴカルコゲノキサンのNMRは濃度依存性を示した。そこで^1H NMR希釈実験を行い、トリカルコゲノキサン2を生成するためのジテルロキサン1とAr_2SeOとの会合定数を算出したところ、CD_3CN中-40℃でK_a=22,000M^<-1>、CD_2Cl_2中-40℃でK_a=340,000M^<-1>であることがわかった。 カチオン性ジテルロキサン1とフタレートとの反応では、超原子価Te-Oアピカル結合を連結子とする[2+2]大環状化合物を生成した。また、テルロキシドとTf_2Oから系内で発生させたテルロニウム塩とフタレートとの反応では、[3+3]大環状化合物を生成した。本系は、超原子価Te-Oアピカル結合を連結子とする大環状化合物の初めての例である。
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