研究概要 |
現在のところ、ポーラスシリコンの発光機構は必ずしも明確にされたと云った状況にはないように思われる。ここでは、化学的なアプローチの一つとして、剛直で、かつケイ素-ケイ素結合およびこの結合に酸素が挿入したケイ素-酸素-ケイ素結合(ジシロキサン結合)を有する多様なかご型分子を合成し、それらの物性と構造との相関関係を明らかにするべく研究をスタートさせた。昨年度は1,2-ジメチル-1,1,2,2-テトラエトキシジシランを酸性条件下で縮合させて、メチル基を置換基とするかご型ポリシロキサンを合成した。今回は前駆体として1,2-イソプロピル-1,1,2,2-テトラエトキシジシランを合成し、酸性条件下で縮合させ、低収率ながらメチル基の場合と同様に、イソプロピル基を持つ2種のかご型ポリシロキサンを合成することが出来た。紫外線吸収極大はメチル体に比較して、長波長シフトして、それぞれ246および242(sh)nmに観測された。一方、発光極大はそれぞれ361および350nmに観測された、しかしその量子収率は低く0.067および0.034であった。これはイソプロピル置換体で、C-H結合等による振動緩和がより有効に働いたためと考えられる。そこで、種々官能基に変換可能なフェニル置換体の合成にとりかかった。フェニル置換体は上記のテトラエトキシ誘導体を前駆体とする方法では目的かご型化合物は痕跡量しか得られなかった。そこで、1,2-ジフェニル-1,1,2,2-テトラクロロジシランを合成し、これをアセトン中で水を用いて加水分解したところ、目的とするかご型化合物がほぼ30%の収率で得られた。
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