研究概要 |
予備的な実験として、まず、フェニルジアゾ酢酸イソプロピル基質として選び、10mol%の希土類金属トリフラート存在下、イソプロピルアルコールとの反応をジクロロメタン中で検討した。Sc(OTf)_3,La(OTf)_3,Sm(OTf)_3,Eu(OTf)_3,Ho(OTf)_3,Yb(OTf)_3,Lu(OTf)_3存在下にそれぞれ反応を行うと、室温あるいは加熱還流下にいずれも良好な収率でα,α-置換反応によるエーテル体が得られることを見出した。また、これらの希土類金属トリフラートの中でSc(OTf)_3を触媒として用いた時に、反応が最も速いことがわかった。また、10mol%のSc(OTf)_3触媒存在下、メタノール、ベンジルアルコール、t-ブタノールとの反応も円滑に進行した。続いて、フェニルジアゾ酢酸l-メンチルを基質として、ベンジルアルコールとの反応のジアステレオ選択性について検討した。Sc(OTf)_3,Sm(OTf)_3,Eu(OTf)_3を触媒として用いた場合のジアステレオ選択性はそれぞれ22%de,10%de,4%deであった。そこで、重複不斉誘導による選択性の向上をめざし、軸性キラル配位子である(R)-および(S)-N,N-ビス(2,6-ジクロロベンジリデン)-1,1'-ビナフチル-2,2'-ジイミン(BINDI/BCB)とSc(OTf)_3より調製した触媒を用い、反応を検討したが、残念ながら選択性はむしろ低下した。ジアゾ酢酸l-メンチルと1,1-ジフェニルエチレンとのシクロプロパン化反応で極めて高い選択性を示した(R)-BINDI/DCB-Cu(MeCN)_4PF_6触媒を用いる反応では、複雑な混合物を与えるのみであった。また、キラルなBINOLとSc(OTf)_3およびアミン類より調製した軸性キラルルイス酸を用いる場合には、反応はほとんど進行しなかった。
|