研究概要 |
ο-メトキシカルボニル-α-ジアゾアセトフェノンを酢酸ロジウムにより分解し、生成したカルボニルイリドをN-置換マレイミドと反応させると、endo-およびexo-付加体が生成することが知られている。ベンゼン溶媒中加熱還流の条件では、熱力学的安定なexo-体が優先して生成するが、同様な条件下、ジクロロメタン中、10mol%のYb(OTf)_3存在下室温で反応を行なうと、endo-体が極めて高いジアステレオ選択性(95:5-78:12)で得られることを見出した。そこで、不斉反応への応用として、軸性キラリティーを有するキラルなN,N'-ビス(2,6-ジクロロベンジリデン)-1,1'-ビナフチル-2,2'-ジアミンおよびYb(OTf)_3より調製した触媒やイッテルビウムトリス[(S)-1,1'-ビナフチル-2,2'-ホスフェート](Yb[(S)-BNP]_3)の添加を検討したが、不斉誘導は認められなかった。一方、芳香族アルデヒドおよびベンジルオキシアセトアルデヒドとの反応のにおいては、10mol%のYb(OTf)_3の添加により、N-置換マレイミドとは対照的にexo-体が高いジアステレオ選択性(97:3-82:18)で得られることがわかった。さらに、新規不斉反応の開発をめざして、ベンジルオキシアセトアルデヒドとの反応において種々の軸性キラルルイス酸の添加を検討したところ、10mol%のYb[(S)-BNP]_3触媒の添加により、ジアステレオ選択性はほとんど示さないもののexo-体において52%eeの不斉誘起が見られることを明らかにした。また、ホルミウム、サマリムおよびランタンなどの希土類金属を含む類似の軸性キラル触媒を用いた場合にも不斉誘起が観測された。これは、カルボニルイリドの環状付加反応において、キラルルイス酸の添加により不斉誘起が観測された初めての例である。
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