研究概要 |
Hydrogen-Bonded Charge-Transfer(HBCT)システムとして、N-アルキルビオルル酸を配位子とした新規遷移金属錯体、およびビオルル酸のカルボニル基をチオカルボニル基に変換した配位子の合成にも成功し、そのX線結晶解析も行い、結晶内における水素結合様式についての知見を得ることができた。また、分子内に種々の水素結合部位をもつ、キナクリドン誘導体の合成を行った。現在では、キナクリドン骨格のみに焦点を当て、これに電子供与基を導入することによって、ドナー性の向上と結晶場における水素結合ネットワークの構築をめざしている。同様に2,7-ジアルキルピリミド[4,5-g]キナゾリン-4,5,9,10(3H,8H)-テトロン誘導体の合成もおこなっている。この分子は、多段階レドックス系としての物性が期待できるようなヘテロ原子をキナクリドン骨格に組み込んだものである。さらに、分子レベルでの水素移動と電子状態との相関関係についての半定量的な知見を得るため、GAUSSIAN-94プロブラムを用いたab-initio分子軌道法(UHF/3-21G^*)を用い、キナクリドン系錯体の計算を行った。モデル錯体として無置換キナクリドンと、N,N'-デヒドロキナクリドン、およびOH置換キナクリドン等のab-initio計算により、新しい電子系であるPET過程の挙動を理解し、水素-電子連動移動型錯体の設計を行なう上での基礎データの一部とすることができた。
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