研究概要 |
平成12年度は,平成11年度の研究で不十分な点を補うとともに,[3+2]光環化付加反応を利用するtriplet biradical生成反応の全体像をさらに解明するため,分子内[3+2]環化付加反応を総合的に検討したところ,次の知見が得られた。 1.[3+2]光環化付加反応を利用したtriplet biradicalの生成反応には,芳香族化合物としてはナフタレン環をもつジエステル類の反応が,またアルケンとしては芳香族置換基をもつアルケン類が特に有効であることが分子間反応系において明らかになったので,それらの構造単位の組み合わせを適当なアルキル連結鎖を用いて分子内に組み込み,種々の溶媒中での光反応を検討した。その結果,室温では,対応する分子間反応系と比較して分子内反応系はtriplet biradicalに由来する反応が進行し難い傾向にあったが,低温では分子内の反応系でもtriplet biradicalが有効に生成しうることが明らかになった。また,溶媒に関しては,分子間反応の場合と同様に,四塩化炭素,ベンゼンなど極性の低い溶媒がより有効であることが明らかになった。さらに,連結鎖として用いるアルキル鎖は,7原子程度の長さが最も効果的であった。 2.分子内の反応系に対してケイ光消光実験を行ったところ,この系でも酸素やフロニトリル等のラジカル捕捉剤は,芳香族化合物のケイ光をほとんど消光しないことが明らかになった。 3.種々の分子内反応系に対して,低温マトリックス中でのESR測定を行ったが,triplet biradical種の生成を確認することはできなかった。
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