研究概要 |
二官能性アリル14族金属試剤である3-トリブチルスタニル-2-(トリメチシリルメチル)プロペン(アリルシラン/アリルスズ複合試剤)存在下でペンジルを光励起すると光電子移動反応がおこり、アリルシラン部位を持つメチルラジカルが発生した。このメチルラジカルはべンジルセミジオンラジカルとカップリングすることにより、アリルシラン部位を有するα-ケトホモアリルアルコールを高収率で与えた。また、3-トリフェニルスタニル-2-(トリフェニルスタニル)メチルプロペン(アリルスズ/アリルスズ複合試剤)を電子供与体とすると、アリルスズ部位を持つメチルラジカルが発生し、このラジカルがセミジオンラジカルとカップリングすることにより、アリルスズ部位を有するα-ケトホモアリルアルコールを高収率で与えた。これらのα-ケトホモアリルアルコーは同一分子内に求電子性のカルボニル基と求核性のアリルシランあるいはアリルスズ部位を同時に持つ分子であることから、従来法のルイス酸誘起反応では調製困難であり、またその分子構造から更なる変換可能な物質である。 また、電子受容体として1,2-ナフトキノンを用い、電子供与体としてアリルスズ試剤を用いた反応では,アリルスズ試剤が光一電子酸化されて生じたアリルラジカルの位置選択的導入を可能にする手法の開発の糸口が見いだされた。即ち熱反応ではキノンカルボニルにアリル基のγ位で導入されるのに対し、電子移動により生じたアリルラジカルはキノンカルボニルにアリル基のα位で結合することが明らかとなった。 このように、初年度の研究実績としてジケトンを電子受容体、アリルスズおよびその複合試剤を電子受容体とする光電子移動反応から生成するラジカル種を利用する特異な炭素-炭素結合反応が開発できた。
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