研究概要 |
昨年度の成果に引き続き二官能性アリル14族金属試剤を電子供与体とし,種々のジケトンを電子受容体とする光電子移動反応から生成するラジカルの性質を活かしたカップリング反応により,アリルシラン部位を有するα-ケトホモアリルアルコールが高収率で得られ,この生成物を利用した立体選択的メチレンシクロペンタン誘導体の合成が達成できた。 また,アリルキノンは電子伝達系あるいは補酵素QやビタミンK類などに重要な役割を担う化合物であるが,その合成法の中で最も効率的な方法としてキノン骨格へのアリル基の直接導入反応がある。本研究課題では1,2-ナフトキノンを基質として用い,γ-置換アリルスズ試剤をアリル化剤とした場合,熱反応ではキノンの4位にアリル基がそのα-位で導入されるのに対し,光反応ではキノンの4位にアリル基がそのγ-位で導入されることが明らかとなった。この結果は。1,2-ナフトキノンのキノンの4位に直接アリル基を導入できる反応である。一方,1,2-ナフトキノンの3位にアリル基を導入するのは非常に難しい課題の一つであり,これまでその方法はなかった。本研究では。1,2-ナフトキノンとアリルシランとの光反応で[3+2]環化付加体がビラジカル中間休を経由して高収率で得られ,その[3+2]環化付加体を三フッ化ホウ素,フッ化テトラブチルアンモニウム,あるいは硝酸セリウムアンモニウムを用いて開環酸化すると3-アリル-1,2-ナフトキノンが合成できることを見いだした。このように,昨年にひきつづいて光によるラジカルの生成を利用し,キノン骨格に直接アリル基が導入できる方法を開発することができた。 更に,アルキル置換-1,2-ベンゾキノンのビラジカル性キノンメチド体の二量化についても新規な二量体の発見などの基礎的成果が得られた。
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