我々の開発した連続反応の展開として、種々のαβ不飽和化合物の本方法を適用したところ以下のことを見いだすことができた 1)アクリルアミドへの本反応はエステルと同様にうまく進行することがわかり、対応するタンデム付加体を収率よく得られることがわかった。このとき、酸性水素を持つ2級アミドヘの反応もこの水素を保護することなく進行することがわかった。また、アミドの置換基としては立体的にかさ高いものがよい立体選択性を示し、N-tert-ブチルアミドを用いるとsyn-体を約9:1以上の選択性で得られることがわかった。硫黄求核剤だけでなくセレン求核剤に対しても反応は効率よく進行した。しかも、セレン求核剤を用いた場合では反応後セレノ基を酸化的あるいは還元的に除去することで、容易にアミドBaylis-Hillman付加体あるいはアミドアルドールに導けることがわかった。特に前者は通常のBaylis-Hillman反応条件をアクリルアミドに適用しただけでは全く生成しないことから本反応は便利な等価反応として用いられることが明らかとなった。 2)カウンターカチオンをマグネシウムとすることで、従来のリチウムを用いた場合と逆の立体選択性を実現することができた。すなわちクロトン酸tert-ブチルエステルヘの本タンデム反応は、従来法のリチウムを用いたときに比べて逆の立体配置を持つanti-aldol型の生成物を97:3以上の高い選択性で与えた。このことは本反応の合成的価値を高め、これから天然物合成への展開に大きな希望が持てる結果である。
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