研究概要 |
3、5-ビス(1-メチル-1-フェニルエチル)サリチルアルデヒドと4-トリチルアニリンとの縮合により分子内にピケットフェンスを持つシッフ塩基を合成し、純結晶およびアセトンやメタノールをゲストとして取り込んだ包接結晶を得た。それらすべての結晶はフォトクロミックであり、光着色種の熱退色速度の測定などを行い、隣接分子の効果を考察した。デオキシコール酸およびそのアミドの結晶格子にサリチリデンアニリンがゲストとして包接された結晶を単離した。その結晶がフォトクロミズム現象を示すことを確かめ、光着色化学種の熱退色反応速度を測定した。デオキシコール酸アミドによる包接結晶状態では、純結晶およびデオキシコール酸による包接結晶の場合より熱安定な光着色体が得られることなどが分かった。この様に、結晶中でのシッフ塩基類の光異性化反応が、隣接する分子によって影響を受けることを明らかにし、新規超分子結晶の開発の意義を示した。 新しいホストシステムの開発を目指して、2,6-位にマロン酸ビス(アルコキシエチル)置換基を持ったピリジン配位子を合成した。この配位子にPdCl2(PhCN)2を反応させて得られるPd(II)錯体は、X線結晶構造解析とスペクトルデータ解析により、側鎖がイオン認識部位として機能できるtrans-N2Cl2配位構造をしていることがわかっている。配位子単体およびそれらのPd(II)錯体によるアルカリ金属イオンの溶媒抽出実験を行った結果、配位子単体では水相からCHCl3相への金属イオンの抽出は殆ど見られなかったが、Pd(II)錯体の形成により抽出率の大幅な増加が見られた。この様に、2,6-二置換ピリジン配位子2分子をPd(II)イオンへtrans-配位させると、配位子単体のときにはなかった新しいゲスト認識部位を設定することができることを示し、新しい超分子システム開発の可能性を示した。
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