ポリエーテル鎖を持つ大環状トレーガ-塩基(トレーガロファン)の合成法を改良しトリエチレングリコール ビス(p-アミノフェニル)エーテルとホルマリンを塩酸酸性エタノール中80°で18時間反応させることで効率的に合成する方法を開発することに成功した。分子空洞部はシクロファンホストとして利用するには小さすぎることがわかったので外側の窒素2原子のまわりの不斉環境を利用することを思い立った。中央のエンドメチレン鎖を取り去ってできるジアミンは有望な2座配位子となりかつポリエーテル鎖により反転が抑制されトレーガー塩基のC2のキラルな性質が保持されると考えられた。 実際エンドメチレン鎖を取り去るのはエーテル酸素がすでに電子豊富なトレーガー塩基のベンゼン環を一層反応性に富むものにして酸化剤などに極めて敏感になるため容易ではなかったが、無水トリフルオロ酢酸処理に続くメタノール中での炭酸ナトリウムとの反応で目的のジNH化合物が高収率で得られるようになった。2個の窒素の一方、両方のメチル化された化合物も適当な条件が見つかりやはり高収率で得られた。 これらのトレーガロファンとそのエンドメチレンを取り去ったジアミンの光学分割はキラルカラム(Chiralcel OJ)によって効率的に分離できジNH体、トレーガロファン、NHNMe体、ジNMe体の順であった。ジNH体は驚くべき分離効率を示したが先の応用の展開を考えてトレーガロファンを現在主として分離している。トレーガロファンは溶解度の点で多少問題があったが光学分割するとそれぞれの異性体は溶解度が大きく向上し溶解度を増すための補助溶媒の添加でかなり多量の分取が可能になった。 こうして得られた光学活性体のX線結晶解析にも成功し解析が進行中でで絶対構造も決定できるものと考えられる。 いくつかの金属イオンとの錯形成も確かめられたので現在不斉合成に適した条件の検討中である
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