13員環や17員環骨格を有する天然ポリアミンアルカロイドは、植物より単離され、抗腫瘍活性や血圧降下作用などの生理活性を示すことから、近年それらの合成に興味が持たれている。これらのアルカロイドはβ-アミノ酸部分を骨格に含んでおり、生合成経路は明らかにされていないが、一つの可能な経路としてケイ皮酸とポリアミンとから生成されると考えられる。私たちは光学活性なβ-ラクタムを合成原料として種々のアミノ保護基を有する環状イミノエーテルとの縮合および還元による環拡大反応を鍵段階とする反応条件の確立を目的として、光学活性な13員環ポリアミンアルカロイドの合成を検討した。その結果、立体配置を保持したまま縮合および還元による環拡大反応が進行することが明らかとなった。本方法は、光学活性な大環状アザラクタムの合成法として有用である。 (S)-β-アミノ-β-フェニルプロピオン酸メチルエステル(op>99%)を原料として用い、THF中-78℃でLDAとの反応によりβ-ラクタム(op>99%)を収率50%で合成した。鍵反応は、光学活性なβ-ラクタムとイミノエーテルとの縮合反応および得られた縮環化合物を還元により環拡大する段階である。β-ラクタムとN-アセチル基を含む9員環イミノエーテルとの反応で生成した縮環化合物は光学純度が100%eeであることが分かり、β-ラクタムとイミノエーテルとの縮合反応条件下でラセミ化せずに反応が進行することが明らかとなった。縮環化合物を酢酸溶媒中、シアノ水素化ホウ素ナトリウムによる還元により環拡大し13員環アザラクタムを得た。本方法により13員環ポリアミンアルカロイドである光学活性なジヒドロペリフィリン(op 100%)が合成された。
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