13員環や17員環の骨格を有する天然ポリアミンアルカロイドの一群は、植物より単離され、抗腫瘍活性や血圧降下作用などの生理活性を示すことから、近年それらの合成に興味がもたれている。これらのアルカロイドはβ-アミノ酸単位を骨格に含んでおり、生合成経路は明らかにされていないが、一つの可能な経路としてケイ皮酸とポリアミンとから生成されると考えられる。私たちはキラルなβ-ラクタムを合成原料として種々のアミノ保護基を有する環状イミノエーテルとの縮合および還元による環拡大反応を鍵段階とする反応条件の確立を目的として、光学活性な13員環ポリアミンアルカロイド(ジヒドロペリフィリン)の合成を検討した。その結果、キラル中心の立体配置を保持したままβ-ラクタムとの縮合および還元による環拡大反応が進行することが明かとなった。本方法は、光学活性な大環状ポリアミンアルカロイドの合成法として有用である。 9員環イミノエーテルの原料である9員環ラクタムの合成は、小さなヘテロ環から出発して縮合と還元を行って環を拡大していく方法を用いた。β-ラクタムとN-アセチル基を有する9員環イミノエーテルとの反応で生成した縮環化合物は光学活性カラムにより分離可能で、HPLC分析によりその光学純度が100%eeであることがわかり、β-ラクタムとイミノエーテルとの縮合反応条件下でラセミ化せずに反応が進行することが明かとなった。酢酸を溶媒としてシアノ水素化ホウ素ナトリウムによる縮環化合物の還元反応では、ほとんどラセミ化せずに進行することが分かっているので、縮環化合物を還元により環拡大して13員環アザラクタムを得た。この方法により、光学活性な13員環ポリアミンアルカロイドであるジヒドロペリフィリンが合成できた。
|