研究概要 |
本年度は、当初の計画に従いWeber等の方法に準じて2種のアレン誘導体の合成を検討した。まず初めに4-N,N-ジメチルアミノベンゾフェノンと4-ブロモベンゾフェノンを出発物質として、7段階を経て1-(4-ブロモフェニル)-3-(4-N,N-ジメチルアミノフェニル)-1,3-ジフェニルアレン1(無色油状物、20%)を得た。1をTHF中-80℃でBuLiと反応させた後、これにドライアイスを反応させ、1-(4-カルボキシフェニル)-3-(4-N,N-ジメチルアミノフェニル)-1,3-ジフェニルアレン2を得た。目的物の一つである2は、クロマトグラフィーに用いるシリカゲルやアルミナ等の担体に吸着した段階で濃紫色に変化した。結晶性が悪いため再結晶による精製が出来なかった。そこで、2にジアゾメタンを反応させ、1-(4-カルボメトキシフェニル)-3-(4-N,N-ジメチルアミノフェニル)-1,3-ジフェニルアレン3(無色固体、1からの収率80%)へ誘導した。次に、4-N,N-ジメチルアミノベンゾフェノンと4-ニトロベンゾフェノンを出発として、7段階を経て、目的とする1-(4-N,N-ジメチルアミノフェニル)-3-(4-ニトロフェニル)-1,3-ジフェニルアレン4を得た。4は現段階で純度が凡そ90%の黄色油状物で、これも精製が難しく単離精製に検討を要する。 以上述べてきたように、本年度は目的化合物2、3及び4の合成法を確立した。これらは、いずれも精製に検討を要する化合物であり、このことはpush-pull効果による反応性の変化を示唆しているものと思われる。アレンの特徴的なスペクトルデータとして、^<13>C NMRにおけるアレン中心のsp炭素の化学シフトが上げられるが、1では208.4ppm3では209.1ppm、4では209.8ppmにそれぞれ観測された。テトラフェニルアレンのそれが208.3ppmに吸収を示すことから、push-pull分極型分子は若干低磁場シフトしていることがわかる。
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