研究概要 |
プロピレンのアイソタクチック重合ではC_2対称架橋型4族メタロセン錯体が用いられる。その合成に際しては、目的とするラセミ体と共に分離除去を必要とするメソ体もほぼ等量生成する。本研究では我々が以前に合成したジメチルシリレンビス(トリメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド(1)について、含まれる二つのクロリド配位子の立体的環境の違いによる反応性の差を利用したラセミ体とメソ体の有効な分離法、メソ体からラセミ体への変換法および分離されたラセミ体とメソ体の重合触媒以外の新しい利用法を見いだすことを目的として行った。 1.1のラセミ/メソ比1:1混合物をトルエン溶液中、微量の水の存在下、1/2当量のアミンを加え、メソ体のみを結晶化の容易なμ-オキソ錯体に変換し、ラセミ体を効率良く単離する方法を見いだした。本分離法は他の分離困難なメタロセン異性体混合物にも応用できることがわかった。 2.メソ体のメチルあるいはアルキニル誘導体を合成した。この溶液を長時間放置すると相当するμ-オキソ錯体が得られた。HIで処理し、μ-オキソヨージド錯体およびジョージド錯体を得た。μ-オキソ錯体と酢酸の反応、塩基存在下での1のラセミ体と酢酸の反応によりそれぞれアセタート基がη^2-配位したメソおよびラセミ型錯体を得た。 3.得られた錯体のX線結晶構造解析を行い、構造について考察した。 4.アセチレン類の存在下にメソ1をBuLi,EtMgBr,あるいはMgで還元し、ジルコナシクロペンタジエン錯体の合成を試みたが不成功であった。これらの反応の過程でメソ体からラセミ体への異性化は認められなかった。
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