研究概要 |
本年度は2-(2-t-butyl-5-oxo-1,3,2-oxathiagermolan-2-ylthio)acetic acid(1)(申請書における化合物C)とその類似化合物の固相での構造および溶液の状態での動的な構造を詳細に研究した. 固相での構造 1 の置換基を t-butyl から phenyl に変えた 2-(2-phenyl-5-oxo-1,3,2-oxathiagermolan-2-ylthio)acetic acid(2)および1,2とピリジンとの反応生成物3,4の構造をX線結晶解析で決定した.2については,炭素置換基を変えても構造には変化がなく,三角両錐の5配位構造であった。また,3,4については,ピリジンがゲルマニウムに配位した6配位構造を期待したが,得られたのはカルボン酸のピリジニウム塩であった.これは高配位ゲルマニウム化合物での5配位構造の安定性を示唆すると解される。 溶液での構造 化合物1-4は2個の酸素原子をアピカル位に持つ,上下の三角錐が非対称な三方両錐構造であるが、室温NMRでは,上下の三角錐が等価である.すなわち^1H及び^<13>CNMRのどちらにおいても,ただ1種の-CH-単位が,^<13>CNMRにおいてもただ1種のカルボニル炭素が観測された.これは2個の酸素原子が早い交換、即ち一種の分子内配位子交換を行っているため,上下の三角錐が等価になったと解釈される.温度可変NMRによると、交換は擬回転機構ですすみ,活性化自由エネルギーはいずれも約12kcal mol^<-1>と求められた.
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