研究概要 |
昨年度は2-(2-t-butyl-5-oxo-1,3,2-oxathiagermolan-2-ylthio)acetic acid(1)(申請書における化合物C)とその類似化合物の固相での構造および溶液の状態での動的な構造を詳細に研究した.今年度はo-位にゲルマニウムに配位可能な原子(特に酸素原子)を持つトリアリールゲルマン類での高配位構造を検討した. 合成した化合物はクロロトリス[2-(メトキシメチル)フェニル]ゲルマン及びメチルトリス[2-(メトキシメチル)フェニル]ゲルマンである.ゲルマニウム上に水素原子を持つ類似体が6配位であることから(ただしo-位の置換基はt-ブトキシメチル)、これらの化合物の構造に興味が持たれたが、X線結晶解析の結果、いずれも三方両錐構造で、5配位であることが確認された.ところが、ゲルマニウム上に水素原子が結合し、かつo-位の置換基はエトキシメチルである、すなわち、立体的にやや混んでいる化合物は正四面体構造をとっていた.これはトリアリールゲルマンにおいて、ゲルマニウム原子に結合した原子の大きさと性質、側鎖のアルコキシメチル基の大きさと種類などがからみあって、ゲルマニウム化合物が高配位構造を取るかどうかを決めていることを意味する.今後、特にゲルマニウム上に小さくて電気陰性度の大きいフッ素原子を置換した化合物を合成して検討したい. また、昨年度から今年度にかけて我々が開発した固体高分解能Ge-73NMR法を高配位構造の解明に利用することを試みたい.
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