研究概要 |
筆者等が合成した6,6'-位に(F_<13>C_6CH_2CH_2)_3Si基を持つ(R)-BINOL((R)-FBINOL)を配位子とするTi錯体で、芳香族アルデヒドのジエチル亜鉛アルキル化をトルエン/FC-72二相系で行った。反応後、生成物を含むトルエン相をフルオラス触媒を含むFC-72(CF_3(CF_2)_4CF_3)相から分離回収し、新たに原料を含むトルエン溶液を加えて再び反応を行った。こうして、5回反応を繰り返したところ、各回の生成物の化学収率(81-87%)及び不斉収率(80-83%ee)は均一系での反応とほぼ同様であった(Tetrahedron Lett.,2000,41,57-60)。 (R)-FBINOLのdi-(S)-2-hydroxy-2-phenyl誘導体をキラルプロトン源にして、2-メトキシ-2-フェニルシクロヘキサノンとSmI_2との反応で生成するサマリウムエノラートの不斉プロトン化を行った。生成物とフルオラスキラルプロトン源は、(F_<13>C_6CH_2CH_2)(CH_3)_2Siが結合したフルオラスシリカゲルカラムを用い、CH_3次いでFC-72でろ過することにより容易に分離できた。こうして得られた粗生成物を、UV及びCD検出器付きHPLCで分析したところ、副生成物の多数のピークが現れるUVとは違って、CDでは生成物のエナンチオマーのピークだけが検出され、驚くべき事に不斉収率は95%eeとPTLC精製後の値(87%ee)より遥かに高く、精製の間にラセミ化が起こっていることが分かった(Tetrahedron,2000,56,351-356)。 このように、フルオラスキラル化合物は反応後生成物との分離が容易で、再利用が可能なばかりではなく、CD検出器付きHPLCを用いれば生成物を精製せずに不斉収率が求められることが実証された。
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