研究概要 |
フルオラスキラル配位子として6,6'-位に(C_6F_<13>CH_2CH_2)_3Si-基を持つBINOL(F_<13>BINOL)及び(C_8F_<17>CH_2CH_2)_3Si-基を持つBINOL(F_<17>BINOL)、6,6'-位に(C_6F_<13>CH_2CH_2)_3Si-基を持つBINAP(F_<13>BINAP)、p-位に(C_6F_<13>CH_2CH_2)_3C-を置換したベンジル基をアミノ基に結合させたエフェドリン、F_<13>BINOLの二つの水酸基に(S)-phenyl-1-hydroxyethyl基を結合させた四座配位キラルジオール(FDHPEB)を合成した。F_<13>BINOL及びF_<17>BINOLでは、これらを配位子したチタニウム錯体を触媒にしてアルデヒドのE_<t2>Z_nによるエチル化反応を試みた。フルオラス逆相シリカゲルにより配位子を回収する実験では、オリジナルの反応と同じ化学収率及び不斉収率を達成した。各回の配位子の回収率は定量的であった。トルエンとFC-72(CF_3(CH_2)_4CF_3)二相系の反応では、トルエン相を新たな基質溶液に代えて5回繰り返し反応したが、不斉収率はほぼオリジナルの反応と同じだった。エフェドリン誘導体でもフルオラス逆相シリカゲルを用いて10回繰り返し反応しても、毎回の配位子の回収率は定量的で不斉収率もオリジナルの反応とほぼ同じだった。FDHPEBをプロトン源に用いるSmI_2による1-methoxy-l-phenylcyclohexanoneの還元的エノラート化/不斉プロトン化反応では、フルオラスシリカゲルでキラル配位子と分離した粗有機生成物をCD検出器付きHPLCで分析したところ、生成物エナンチオマーのピークだけが観測され、不斉収率が95%eeに達することが明らかになった。プレパラチブTLCで精製してから分析する方法では88%ceに過ぎず、若干ラセミ化が起こっていることが分かった。このように、フルオラスキラル触媒を用いる不斉反応では、触媒あるいは配位子をリサイクル出来るだけではなく、生成物の迅速分離、迅速分析が可能であることを実証することが出来た。
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