研究概要 |
パラジウム-銅錯体触媒を用いる末端アセチレンと芳香族ハロゲンおよびハロゲン化ビニル誘導体との交差カップリング反応は、Sonogashira反応と呼ばれ、芳香族アセチレンおよびエンイン誘導体の便利な合成法として広く用いられている。本研究の目的はこのように広範に利用されるようになったパラジウム-銅錯体を用いるSP炭素・SP^2炭素の交差カップリング反応の機構や反応条件を系統的に研究し、反応性の異なるカップリング基質の組み合わせに最適な、触媒、アミン、溶媒などの最適条件を確立することである。溶媒、パラジウム触媒前駆体、アミンの個々の効果については既に数多くの研究例があるが、系統的な研究は皆無である。本年度は有機ハライドの反応性によって最適の反応条件を設定する必要があるのでヨードベンゼン及びブロモベンゼンとフェニルアセチレンとの交差カップリング反応について研究した。ヨードベンゼンとフェニルアセチレンとの反応は室温で進行し、その活性の順序は(PPh_3)_2PdCl_2>Pd(OAc)_2+2PPh_3>Pd(PPh_3)_4であるが,実用的には標準条件であるNEt_2Hを溶媒とし(PPh_3)_2PdCl_2(5%mol),Cul (10mol%)で十分であることが明らかとなった。一方ブロモベンゼンとフェニルアセチレンとの交差カップリング反応についてはブロモベンゼンの触媒活性種Pd^0錯体への酸化的付加が律速となり70℃の加熱が必要である。加熱条件ではPd-C結合へのフェニルアセチレンの挿入反応が並行するのでのでブロモベンゼンに対し2等量のフェニルアセチレンを用いる必要がある,反応の最適条件は、PhC-CH(2等量)C_6H_5Br1等量Bu_4NI10mo1%Pd(OAc)_24mol%CuI4molDMF/:nBuNH_2=20/170℃4hが実用可能であることが明らかになった。ブロムベンゼンの酸化的付加活性が高く勝つ活性中間体の熱安定性を考慮した配位子の開発が次年度の課題である。
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