現在のC_<60>に関する研究は、直接C_<60>に各種化学反応を行うものが殆どであるのに対し、本研究では、大環状クラウンエーテルでそれを包接することによりapical位選択的な新たな反応性を引き出し、官能基化を行うと言う特色がある。この土星型抱接C_<60>創製のための新ホスト分子として、すでに合成法の確立した36-クラウン-4に加え、36-クラウン-4にベンゼン環を導入したクラウンエーテル(1)とさらにベンゼン環と三重結合を導入したクラウンエーテル(2)を合成することに成功した。1の合成は、比較的安価な化合物を出発原料として順次炭素鎖を伸長した後、最終段階に分子間閉環反応と分子内閉環反応を用いる2種の合成法を検討した。その結果、分子間閉環反応による合成法においては、相当するジオールとジトシラートの環化収率は7.1%であり、全収率も2.5%と低いものであった。一方、合成前駆体であるヒドロキシトシラートの分子内閉環反応を用いた場合には、環化反応においては3.6倍の収率(25.6%)であったが、反応段階数が多くなってしまうため、全収率としては3.6%となり前者とほとんど変わらなかった。また2においては、短段階合成法を目指し、2種の分子間閉環反応を用いる合成法を検討した。分子間4分子閉環反応の場合には、全段階数3段階と非常に短段階で合成に成功したが、全収率は3.3%とやはり低いものであった。分子間2分子閉環反応の場合にも全段階数4段階と短段階での合成に成功したが、全収率はほぼ同様であった。1および2ともに合成することは出来たが、まだ充分とは言えないので今後さらなる検討が必要である。現在、1と2の大量合成法の確立とC_<60>との抱接に関する研究を進めているところである。
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