研究概要 |
本研究は,高圧力が直接的にしかも連続的に,(1)金属と配位原子間の結合距離の変化を通して配位子場を変化させ金属錯体分子の電子構造・電子状態を大きく変化させる,(2)金属錯体分子間の集積度を変化させ,分子間相互作用を通して錯体分子ならびにシステム全体に新しい電子状態を生み出す,こと等を期待して,金属錯体分子システムの物性・機能性の探索に高圧力を積極的に利用することを目指したものである.具体的には,ダイヤモンド・アンビル・セルで発生させた高圧力下,金属錯体試料の混合原子価状態に起因する原子価間の電荷移動遷移吸収帯を高圧顕微分光システムを用いて測定し,高圧力と電子状態,分子間相互作用の関係を検討するべく以下のことを実施した.(1)ダイヤモンド・アンビル・セル高圧発生装置を改良製作し,組み立て調整を行った.(2)ダイヤモンド・アンビル・セルの微小試料部分に対応した長作動の顕微光学系の組み立て調整を行った.(3)顕微鏡にレーザー照射装置を新たに製作,組み付けし,圧力校正用顕微ルビー蛍光測定システムを作製した.(4)圧力発生のための種々の条件(キュレット径,ガスケット厚・径,圧力媒体等)による到達圧力,静水圧性についてのデータを収集した.(5)一次元混合原子価白金錯体を合成し,高圧力下での分光測定を行った.混合原子価状態が圧力に依存して変化することを確認した.今後は詳細な圧力依存性の検討や,他の多くの化合物も測定し,圧力変化の化合物依存性を検討する.
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