ウルシラッカーゼからタイプ2銅を選択的に除去して、酸素に対する反応性を失ったタイプ2銅除去体を作成した。このイプ2銅除去体に対して、嫌気下において、化学量論的な量の塩化第一銅を作用させて、約6時間インキュベートさせた。このようにして、タイプ1銅が2価であり、タイプ2、3銅が1価である混合原子価ラッカーゼを作成した。この新しい混合原子価ラッカーゼは天然型酵素と同様に、酸素に対して極めて反応性に富んでいた。しかしながら、1電子欠損状態にあるため、酵素はターンーバーすることがなく、通常の酵素反応中では捕捉することの出来ない酸素の2電子還元種を与えた。この中間体は時間オーダーの寿命を持っていた。各種スペクトルを用いたキャラクタリゼーションやこの中間体の分解過程の動力学的検討から、中間体の構造を提唱するに至った。前年、捕捉することに成功した酸素の3電子還元体および、今年度行った3電子還元体の生成に対するストップトフロー研究の結果を総合して、ラッカーゼによる酸素の4電子還元過程を明らかにすることが出来た。現在、すでに研究成果は一部論文になっているたが、残りは投稿中であり、前年度の結果とあわせると、ラッカーゼによる反応過程の主要部分がほぼ解明できたことになる。一方、ビリルビンオキシダーゼについても、同様の3電子還元体を捕捉することに成功し、マルチ銅オキシダーゼによる反応過程には共通性があるものと確信しているが、2電子還元体の作成には現在のところ成功していない。
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