ウルシラッカーゼの酸素による酸化反応過程を検討し、酸素の3電子還元体を捕捉することに成功した。分光学的および磁気的にこの種をキャラクタリゼーションすることによって、この中間体がヒドロキシルラジカルであることを明らかにした。また、この中間体の消失過程の動力学を検討した。さらに、中間体の生成過程についても検討し、酸素の拡散速度や酵素内の銅中心間の電子移動過程が酸素の還元速度を支配していることを明らかにした。さらに、関与する種の拡散速度と電子移動速度のかねあいによって3電子還元体以前の中間体は捕捉不可能であることがわかった。そこで、酸素に対して不活性なタイプ2銅の選択的除去体に、嫌気下において、化学量論的な量の塩化第一銅を作用させることにより、タイプ1銅が2価、タイプ2、3銅が1価である混合原子価ラッカーゼを作成した。この1電子欠損状態にある誘導体においては、タイプ2銅から酸素還元中間体に対する電子移動速度が遅いために、通常の酵素反応中では捕捉することの出来ない酸素の2電子還元種を捕捉することに成功した。これらの結果を総合して、ラッカーゼによる酸素の4電子還元反応の全貌を明らかにすることが出来た。一方、ビリルビンオキシダーゼについても、3電子還元体を捕捉することに成功し、マルチ銅オキシダーゼによる酸素の電子還元反応は共通したプロセスをたどることがわかった。
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