研究概要 |
酢酸イオンを架橋配位子とし一酸化炭素と塩化物イオンをエカトリアル配位子に持つイリジウム(II)複核錯体[Ir_2(O_2CCH_3)_2C1_2(CO)_2]を一段階の合成法でH_2IrC1_6,CH_3CO_2Li,CH_3CO_2H,(CH_3CO_2)_2Oから合成した.この錯体を原料として,この錯体の軸位にアセトニトリル,ピリジン,ジメチルホルムアミド,ホスフィン,アルシンなどを結合させた化合物[Ir_2(O_2CCH_3)_2CI_2(CO)_2L_2]を合成した.この内7種の化合物についてX線構造解析を行いIr-Ir距離がの配位子の違いによってアセトニトリル錯体の2.569(1)Åからトリシクロヘキシルホスフィン錯体の2.6936(7)Åまで約0.12Å変化することがわかった.また,酸化還元反応性をサイクリックボルタンメトリーによって調べた.どの錯体も化学的に可逆な酸化波が確認され,その電位は配位子の種類に依存してトリシクロヘキシルホスフィン錯体の0.21Vからアセトニトリル錯体の1.30Vまで変化することがわかった.酸化種は室温では約10分の半減期で分解するため,低温で電解酸化を行い,トリフェニルホスフィン,トリシクロヘキシルホスフィン,トリフェニルアルシンおよびピリジンを軸配位子とする錯体のESRスペクトルを測定した.ホスフィンを軸配位子とする錯体はそのg_⊥とg_″の値,およびそれぞれの超微細構造のパターンからそのHOMOはσ_<Ir-Ir>軌道であることが明らかとなった.また,ピリジン錯体はg値が前記の錯体とは異なり,ランタン型ロジウム複核錯体のg値との比較からそのHOMOはδ*_<Ir-Ir>軌道であると推定した,Gaussian 98プログラムを用いたDFT計算をモデル化合物[Ir_2(O_2CH)_2Cl_2(CO)_2(PH_3)_2]および[Ir_2(O_2CH)_2C1_2(CO)_2(AsH_3)_2]に対して行ったところ,HOMOはσ_<Ir-Ir>軌道となり実験結果を再現できたが,[Ir_2(O_2CH)_2Cl_2(CO)_2(pyrdine)_2]ではδ*_<Ir-Ir>軌道とはならず計算方法のさらなる検討が必要であることがわかった.
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