研究概要 |
金属錯体界面活性剤の形成する分子集合体は,効率の良い反応場として期待できるが,系統的な研究はほとんどなされていない。研究代表者らは,比較的単純な金属錯体界面活性剤を用いて,集合体の物性,構造,ならびに反応場としての機能性の三者間の関連性を追及することを目的に研究している。特に本研究では,逆ミセルあるいはW/O型マイクロエマルジョンを形成しやすいアルキル鎖を二本持つタイプの分子を対象の中心に据え,その分子の結晶中での構造,集合体の構造,そして集合体の物性との間の関連性を追及する目的で研究を行った。具体的には,昨年まで主に研究対象とした,亜鉛(II)のオクチルならびにヘキシルエチレンジアミンのビス錯体に加えて,カドミウムやパラジウムなどの同じタイプの錯体を新たに合成して有機溶媒/水の混合系でその集合挙動を調べた。カドミウム錯体は亜鉛錯体と同様であるがやや疎水性が高いことが分かった。しかし,パラジウム錯体はイオン性が高く,電気伝導度の水分依存性に異常が見られた。ただし,このプロファイルは典型的なW/OマイクロエマルジョンであるAOTの系と似ており,イオン性W/Oマイクロエマルジョンに特有なものと考えられる。また,溶質の自己拡散係数の水分依存性を測定したが,亜鉛錯体またはカドミウム錯体とパラジウム錯体との間で差が認められた。それぞれの錯体について電気伝導度の結果とある程度同様の傾向を示したが,電気伝導度の結果の方がより顕著な変化を示した。更に,これら金属錯体マイクロエマルジョン系に還元剤を添加すると,粒子径の揃った金属ナノ粒子が形成されることが分かりTEMを使って更に追及している。
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