研究概要 |
1.有機-無機複合結晶のデザイン合成.芳香環が配位窒素原子側に張り出しているため,配位の際に必然的に立体障害を生じ,弱い配位結合や歪みの効果による発光状態のチューニングが期待できる2,2'-ビキノリン(biq)を用いて,新規白金錯体とその複合結晶の合成に成功した。X線結晶解析の結果,単離した結晶中では,二つの[PtCl_2(biq)]が非配位のtrans-biqをサンドイッチした2:1組成の複合体を形成していることが見いだされた。非配位のbiqは良い平面構造をとっているが,錯体中のbiqは大きく彎曲しており,配位の異常性を示している。グラス性溶液の発光測定の結果,非配位のbiqと錯体の両方からの発光が観測された。[PtCl_2(biq)]の発光は,対応する[PtCl_2(i-biq)](i-biq=3,3'-ビイソキノリン)の発光とくらべて2300cm^<-1>も低エネルギーに現れ,構造の歪みとの関連を引続き探究中である。 2.分子選別取込み機能の評価.平面性のジイミン配位子と非平面型配位子のエチレンジアミン(en)の両方を含む系白金錯体,[Pt(en)(L)]^<2+>(L=phen,bpy)は,白金間の相互作用が不利になるかわりに,中性のフリーphenを優先的に取り込んで1:1交互スタックを形成することを見出した。選択的交互スタック形成に対するサイズやヘテロ原子の効果を調べる為に,種々の芳香属化合物を用いて有機-無機複合結晶形成能を調べた。その結果,約20種の複合結晶を得,そのうち10種の単結晶X線構造解析に成功した。それらの構造の比較から,[Pt(en)(L)]^<2+>に対しては,フェナントレン骨格が,交互スタック形成にちょうどよいサイズであり,このことが選別集積が起こる最大の要因であることが結論づけられた。これらの複合結晶の発光挙動から,複合体の分子間で容易なエネルギー移動が起っていることが認められた。
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