研究概要 |
1.多重相互作用系の構築と発光状態のチューニング. ジシアノビピリジン白金(II)の赤色結晶(Red Form)は,白金直鎖構造を持ち,室温でも強い赤色の発光を示す。本研究で、この結晶が空気中の水分子に鋭敏に感応して起こる赤色【double arrow】黄色の変化、"vapochromism"を観測し、X線構造解析と発光測定からそのメカニズムを解明した。すなわち、Red Formは空気中の水分子を取り込んで黄色結晶(Yellow Form)に変化し、また、乾燥空気中や有機溶媒雰囲気下では、逆にYellow FormはRed Formに変化する。今回、新たに不安定なYellow Formの構造決定に成功した。その結果、Yellow Formのスタッキング構造は、はじめに予想されたような白金間距離が伸びた構造ではなく、横ずれをしたジクザク構造であることがわかった。空気中の水分子を取り込んで、CN^-と水素結合を形成することによりスタッキングの歪みが起こり、発光変化をもたらすことが明らかとなった。 2.歪んだπ共役系を持つ(ジイミン)白金(II)錯体の発光変化. 昨年合成に成功した配位立体障害を持つ錯体、ジクロロビキノリン白金(II)やビス(ジイミン)白金(II)錯体の構造と発光特性について引き続き検討した。その結果、[PtCl_2(biq)](PF_6)_2結晶の構造解析にも成功したが、やはりπ共役配位子が異常に歪んだ特異な構造が見い出された。対応する錯体より低エネルギーに現れる発光は歪みにより低エネルギー化したMLCT状態の影響を強く受けていると考えられる。
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