研究概要 |
本年度は2種類の新規架橋配位子3-[1-(2-pyridyl)-3,5-dimethylpyrazole-4-yl]pentane-2,4-dione(HL1)と1-(3-Pyridyl)-3-(4-pyridyl)-1,3-propandione(HL2)を合成し、これらを用いたCu(II)集積型錯体の研究を展開した。両配位子は、β-diketoneサイトとpyridylpyrazole(HL1)又は3-pyridine,4-pyridine(HL2)サイトを有しており、β-diketoneサイトでコアとなる単核ユニットを形成し、他のサイトでユニットを連結するように設計されている。 配位子HL1を用いると、金属間の架橋角度を120度に固定することで、六核環状構造を有する{[Cu(L1)(H_2O)]ClO_4・2H_2O}_6(1)が得られた。X線構造解析により、(1)が環状骨格内に約18Åの空孔を有し、六核ユニットが積層することで1次元チャネル構造を形成している事を確認した。多孔構造に基づくガス吸着機能の発現が期待されるため、(1)を用いてN_2,O_2の吸着を検討した。しかし、結晶水の除去により六核ユニットの積層構造が乱れてチャネル構造が崩壊したため、期待される程の吸着能は発現しなかった。脱水処理によるアモルファス化は、粉末X線により確認した。 配位子HL2からは[Cu(L2)(bpy)]BF_4を合成した。X線構造解析より、β-diketoneサイトとbpyから成る単核ユニットを4-pyridineサイトが連結することで1次元螺旋鎖を形成し、この1次元鎖を3-pyridineが連結して3次元ネットワーク構築している事が確認された。3-pyridineによる連結でも1次元螺旋鎖が形成されており、4-pyridineのrigidな結合と3-pyridineのflexibleな結合が機能的に作用して互いに直交する螺旋鎖同士がリンクすることで3次元ネットワークが成立している。今後は、(2)の3次元的多孔構造を利用したガス吸着について検討していく。
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